So-net無料ブログ作成
検索選択

裏・桃太郎 [GBA]

むかしむかし鬼が島に桃太郎が暮らしていました。

犬、さる、きじをけらいにして、赤おにと青おにをしたがえて平和にたのしく暮らしていました。

 

あるとき、桃太郎がいいました。

「こうして平和にたのしくくらしているが、なにかもっとしげきてきなことはないかなぁ。」

 

犬が答えました。

「こうして平和に暮らせるだけで十分ではありませんか。」

さるが答えました。

「でも、しばらく、島の外へでていませんね。たまには外の空気もすってみたいな。」

するときじが答えました。

「空を飛べる友だちの話しによると、ここから舟で3日3晩いったところに『にほん』という国があるそうです。そこにすんでいる人たちはたいそう悪い人たちで、『せかい』のいろいろな人やどうぶつやかんきょうにとてもめいわくをかけているそうです。」

それをきいた桃太郎はいいました。

「それは一大事だ。ぼくたちの力でその悪い『にほん』をやっつけよう。」

おとなしい犬も桃太郎のことばにさんせいしないわけにはいきません。

おおぜいの赤おにと青おにに見おくられて、桃太郎は出発しました。

舟には犬とさるときじがのっています。

「日本一」のはたも立っています。

 

犬とさるときじは3日3晩というもの舟をこぎつづけました。

そうしてようやくにほんがみえてきました。

 

「うあ、すごく大きなたてものだ」と犬がいいました。

「うあ、すごくたくさんの人が行き来しているな」とさるがいいました。

「うあ、すごくたくさんの車が行き来しているな」ときじがいいました。

「うあ、すごくおいしそうな食べ物のにおいがするな」と桃太郎がいいました。

 

まわりを見回しながら一行は道を歩いていきます。

どんどんどんどん歩いていきました。

それでも、たてもののかずも、人のかずも、車のかずも、おいしそうな食べ物のかずも少しもかわりません。かえってふえていっているようです。

 

「これではどこから悪いにほんをやっつけるためのたたかいをはじめればよいのか、わからないな。」とはじめて桃太郎は気よわなことをいいました。

「なんとかなりますよ。」と明るいせいかくの犬はいいました。

 

そしてまたしてもどんどんどんどんどんどんと歩いていきました。

するとふしぎなことに気がつきはじめました。

あるところでは、手に小さなきかいをもった男がそのきかいにむちゅうになって歩いているうちに、でんちゅうにぶつかって、ひっくり返ってしまいました。

またあるお店では、食べものを手にした二人の男の子が地面にしゃがみこんで食事をしていました。

そして、地下てつにのるとたくさんの女のひとがかがみにむかっていっせいにお化しょうをしていました。

化粧をしていない人は一生けん命に小さなきかいにむかってなにかをしています。

すごいいきおいで指がうごいています。

指がうごいていない人は、その小さなきかいをみながら、とてもいやなかんじの笑いがおをしています。

そして、その人たちの耳からほそ長い線がのびて、ポケットに入っています。

また、てれびという絵と音がでるはこを見ていると、白いたてがみをなびかせた「しゅしょう」という人が大きな声で「みんえいか」ということばをしきりにいっていました。でも、これは「げきじょう」のはなしのようでした。

 

 これはいままでにみたことがないようすでした。

桃太郎は犬、さる、きじとこんなにほんのしげきてきなようすをしばらくのあいだ見てまわりました。

そして、あるとき、桃太郎はぽつんといいました。

 

「かえろう」

 

犬はおどろいていいました。

「桃太郎さん、どうしてたたかわないんですか。」

さるもいいました。

「てきがおおぜいだって、ぼくたちもいるし、鬼が島から赤おにや青おにをよべば、こわいものはありません。」

そして、きじもおこったようにいいました。

「このにほんをこのままにしておいたら、『せかい』はどんどん悪くなってしまいますよ。どうしてたたかわないんですか。」

 

桃太郎はすこしつかれたような声でこういいました。

「このままほっておいても、にほんはだめになるよ。見ていてごらん。」

「でも」とあきらめきれないきじがいいました。

「だいじょうぶ。あと10年でにほんはだめになるよ。」

桃太郎はそういうと、さっさと来たみちをもどっていきました。

犬、さる、きじもあわててそれについていきました。

 

桃太郎が鬼が島に帰ってからすぐのことです。

にほんでは、細長い島のあちらこちらでたたかいがはじまりました。

あるまちで男の人がべつの男の人にぶつかってしまいました。

今までだったら、ぶつかったほうが「すいません」といって、ぶつけられたほうが「きをつけろよ」といってそのばは終わっていました。

しかし、今はちがいます。

「いたいな。」「なんだよ。」「なんだよ。」

そういってげんこつをかためて相手になぐりかかります。

その相手もおなじようになぐりかかります。

まわりで見ている人も、そのけんかをとめることなく、む関心に通りすぎていきます。

 

そんな小さなたたかいはどんどんどんどん広まっていきました。

そして、いつのまにかにほんぜんたいがたたかいに明けくれるようななりました。

工場のきかいはとまり、車もひこうきもでんしゃも船もうごきません。

電気もガスも水道もとまってしまいました。

その内に食べるものもだんだんとなくなってきました。

そして、ひとりまたひとりと死んでいきました。

 その死体をふみこえて、たたかいはつづいていきました。

 

 

桃太郎が去ってから10年後のある冬の日、にほんの空をきじが大きく旋回して飛び去っていきました。

工場のけむりも、車もひこうきもでんしゃも船も、そして人も、なんにもうごくものはみえませんでした。

「け~ん」と一声高くなくときじのすがたはにほんの空から見えなくなっていきました。

その声は楽しそうな笑い声に聞こえました。

 

桃太郎はそれから後、しげきをもとめることもなく、犬やさるやきじと赤おにと青おにたちと楽しく暮らしました。

そして、にほんがほろんだおかげで、せかいも平和になりました。

めでたしめでたし。

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:GBA2005ノベル

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。